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岩盤浴の衛生管理について


投稿者名:カミーユ

タイトル:岩盤浴の細菌について


 

五味先生へ
初めまして、学習塾を経営しているものです。
今年5月に初めて岩盤浴を体験しました。その時の、あの汗がとても不思議で、何故、臭わないのか?何故べとべとしないのか?などいくつかの疑問を抱えながら、その後も何度か岩盤浴を楽しんでおりました。

そして、先日、先生の「岩盤浴の秘密」という本を読ませていただき「なるほど」と納得した次第であります。さらに、NK細胞の増加等、いいことだらけだな。と、これからもどんどん利用させていただこうと思っていたいましたが、本日の週刊ポストという週刊誌に「岩盤浴は細菌だらけ」という記事が載りました。

私自身、以前、水虫を患ったことがあったため、実際、岩盤に素足で立っていて「水虫菌などいる可能性があるなぁ」と脳裏をよぎったことも事実です。素人でも、あの環境は菌が増殖していても不思議には思いません。

その点について、専門家のご意見をいただけたらと思い、メールをさせていただくことにしました。せっかくの岩盤浴です。先生のおっしゃるように健全に普及していって欲しいと願っているものとして、どう対処していったら良いのか?もちろん、これは経営側の問題です。でも、このまま、これが事実として放置されるようであれば、当然、一過性のもので終わってしまう懸念があります。

お忙しい中、恐縮ですが、一岩盤浴ファンとしての不安にお答えいただけたら幸いです。

 

投稿者名:五味院長

タイトル:岩盤浴の衛生管理について



カミーユさん。
私もその記事は読ませていただきました。

「ある岩盤浴施設を、ある検査機関が抜き打ちで測定したところ、一般家庭のフローリングの数値の150倍〜250倍の真菌や一般細菌が検出された」というものです。

私は、このような検査結果が今のこの時期に提起されたことは、岩盤浴の将来にプラスになると思います。岩盤浴のスタッフが衛生管理について自覚するきっかけとなるからです。
また、今の加熱気味の岩盤浴ブームを、もっと地道で健全な発展の方向へと転換するよい機会だとも思います。

いずれにせよ、岩盤浴は、その温度・湿度環境が細菌や真菌の繁殖環境に好都合であることは事実であり、しかも不特定多数の人が狭い空間を利用するのですから、岩盤浴の経営者が、清掃・洗浄・消毒といった「衛生管理」を徹底しなければならないことは常識以前の問題です。

ところが、ブームがこのように大きくなり(その責任は私にもあるのですが)、事業としても成り立つようになると、さまざまな業界から「岩盤浴業」に参入してくるようになるのです。
衛生観念のしっかりした経営者も多いでしょうが、中には清潔不潔の感覚がゼロという人がでてきても不思議ではありません。
今回の報道は、岩盤浴に関わる全ての人が自分に対する警告であると自覚して、今後他人から指摘されるまでもなく、自主的に消毒や細菌検査を実施してほしいと思います。

ただ、記事によると、厚生労働省や保健所などの公的機関が「立ち入り検査」をしたということではなく、サウナ・浴場業界の依頼で民間の検査機関が「抜き打ち検査」(つまり無断で勝手に)を実施したようです。第三者の私からは、急激に発展している新興の産業と成熟しきった既存の産業とのよくある、綱引き構造のようにも見えます。出すぎた新勢力の杭が、危機感を持った旧勢力からコツンと打たれた例とも言えるでしょう。
物事は「ほどほど」が大切ということです。

しかも、記事によると、一般家庭に比べて「尋常でない数」の細菌や真菌が検出されたとありますが、それは過去に温泉施設で発生したレジオネラ菌感染のような「事例」が、実際に利用者に発生したということではありません。
温浴施設で、最も問題なるのはレジオネラ菌感染の問題です。レジオネラ菌は非常に重篤な肺炎を起こすことがあるからです。

しかし、レジオネラ菌の感染に関しては、私は、岩盤浴は浴槽のような水周りを伴う施設に比べると(比較的にですが)安全と考えています。
なぜなら、レジオネラ菌は「よどんだ水」の存在するところで増殖しやすいからです。過去の事例も「かけ流し」の温泉ではなく、同じ湯水を何度も使用する「循環式」の温泉でした。ですから、循環式の温泉では大量の塩素による消毒が絶対に必要となるのです。そこに「そんなの温泉ではないよ!」という温泉ファンの嘆きがあるのです。
あとは、通常の浴槽に設置されているシャワーのホースの部分のように水が溜りやすいところも繁殖の可能性があります。(だから、公共浴場のシャワーは、最初の部分は捨てて途中から身体にかけるのがよいのです。)

その点、岩盤浴室では「水のたまる」ところは少ないため、レジオネラ菌の繁殖の危険性は(比較的に)低いと私は考えています。
しかし、例外があります。それは「加湿器」です。岩盤浴では一定の「湿度」が必要です。
水をためておいて噴霧するような加湿器を設置している施設では、毎日の水の交換や加湿器の消毒が必要となるでしょう。
特に、湿度を高めに設定している施設ではレジオネラ菌だけでなく真菌(カビ)の発生にも注意が必要です。
もうひとつ、岩石の塊をそのまま使用する「玉石タイプ」の施設で、凹み面に水がたまりやすく、消毒がしにくい施設も注意が必要でしょう。


ここで、良い機会ですから今回は「消毒の仕方」について、私の病院の手術室の消毒法を参考にして簡単に説明しましょう。
(正しい消毒法は、経営側だけでなく、利用者側も知識として身につけることは有益でしょう)

まず、最も簡単で、効果的な「消毒法」とは「水洗い」です。

手洗いでも床洗いでも同じです。特に流れる水で洗うと、細菌のほとんど(多分90%以上)が除去されます。私の病院でも、全ての床面を必ず毎日水洗い(水拭き)による清掃を実施しています。(私の病院の看護師の仕事の半分以上は衛生管理です)

岩盤浴室でも(手術室のようなクリーンルームにする必要はありませんが)、「準無菌室」にするくらいの心がけは大切でしょう。
ですから、岩盤浴でも、一日最低1回(出来れば2回)の岩盤を含めた床の水洗いや水拭きによる清掃が基本です。

その上で、1週間に1回〜3回の(できれば毎日の)殺菌剤による消毒が必要とされるでしょう。
岩盤浴のスタッフには、しっかりとした消毒法の知識も求められます。

消毒には、「理学的方法」と「化学的方法」があります。

理学的方法とは、熱や紫外線の作用を使う方法です。
細菌やウイルスは、80度以上の水蒸気で10分、沸騰したお湯ではたった2分で死滅します。これを煮沸消毒と言います。私の病院では、煮沸消毒をする「オートクレープ」という専用の機器がありますが、一般の家庭にある鍋で煮沸しても同じです。

化学的方法は、消毒薬を使用する方法です。
消毒薬の種類は、大きく分けて次の4種類くらい覚えておいても損はないでしょう。

(1)アルコール消毒 
エタノールやイソプロピルアルコールが細菌の菌体の蛋白質を凝固することで殺菌します。デオドラント剤によく使用されますね。
しかし、岩盤浴の消毒としては、濃度が低下すると殺菌力が低下しますので、アルコールより、次の3つのうちどれか(または複数を併用)を使用するのがよいでしょう。

(2)逆性石鹸
「陽イオン界面活性剤」とも、化学名では「塩化ベンザルコニウム」とも言います。 
これは、殺菌剤の陽イオンが細菌の細胞膜の酵素を変性させることで作用します。10種類以上の商品があります。商品名で有名なのは「オスバン」や「ウエルパス」です。ウエルパスは私の病院では、手術の時の手洗いにも使用しています。
これは、一般細菌や真菌には有効ですが、ウイルスや芽胞(細菌の胞子状のもの)には無効です。
皮膚への毒性が低いので、岩盤面の消毒には向いているでしょう。
注意することは、陰イオンの石鹸と併用すると効果がなくなることです。

(3)両面界面活性剤
逆性石鹸が陽イオンだけでしたが、これは陽と陰の両方のイオンに電離することで作用します。両方ある分、広いpHの範囲で使用でき、洗浄効果も合わせもっています。これも一般細菌と真菌には有効ですが、ウイルスと芽胞には無効です。
これも毒性は少ないので、岩盤の消毒には向いているでしょう。
たくさんの種類がありますが、商品名で有名なものは「アルキッド」「オバノール」などです。

(4)塩素系(ハロゲン系)
化学名で「次亜塩素酸ナトリウム」(これは覚えてください)と言います。 次亜塩素酸を遊離して酸化作用で殺菌します。これは、一般細菌や真菌だけでなく、ウイルスにも有効な殺菌です。
また、脱臭作用もあります。
ただし、酸性の条件では塩素ガスが発生しますので、酸性の薬物との併用は禁忌です。
また、皮膚に対して刺激性がありますので、岩盤に使用した場合には一定時間後は水洗いをしてきれいに流すことも大切です。
加湿器の消毒には塩素系が向いているでしょう。
商品名では「アサヒラック」「サンラック」などいくつもあります。

以上の3種類をうまく使用するとよいでしょう。
例えば、毎日の消毒には(2)か(3)を、その上に、週に1回くらい、よりスペクトラムの広い(4)を使用するといった具合です。
さらに、(4)と(2)か(3)のどちらかを併用すると(そのような商品もあります)消毒としては万全でしょう。

どちらを使用するとしても消毒後は、少し(15分くらい)時間をおいてから、水拭きや水洗いをするようにしてください。

以上の4種類でも芽胞に対しては無効ですので、100%完全を求めるなら「グルタールアルデヒド」という強力な殺菌剤が必要ですが、人体への刺激性が非常に強いので、岩盤浴では不向きでしょう。また、岩盤浴室は、手術室のように無菌室になる必要はありませんので、ここまでの消毒は不要です。  

床面だけでなく、1週間に1回(少なくとも1ヶ月に1回)は壁面も、さらに数ヶ月に1回は天井も以上の消毒液で洗浄するようにしてください。(ここまでするのは大変ですが、それが信用になるのです)

また、私の病院では、手術室を夜間「紫外線照射器」で殺菌しています。
紫外線照射器は少し値は張りますが、スタッフがセットしてから帰宅すると、誰もいない夜間に消毒を勝手に済ませてくれるすぐれものです。部屋全体を消毒するには有効です。
ただし、紫外線照射器は、湿度が高いと漏電する可能性もありますので、岩盤浴室での室内全体の消毒としては、「オゾンガス殺菌」の 方が有効かもしれません。

さらに、私の病院では、手術室のみ1ヶ月に1回、塩化ベンザルコニウムの噴霧を専門の業者に依頼しています。
部屋全体の消毒には非常に有効です。しかし、噴霧直後は目や鼻をツーンと刺激しますので、お休みの前にするのがよいでしょう。
紫外線照射とこれを実施した場合には、天井の手拭による消毒は不要となりますのでスタッフの労力は省けます。

これらの消毒を万全に行なった上に、半年に1回程度、専門の検査機関に「細菌・真菌検査」を依頼します。(今回報道の検査機関のように無断でルール違反の抜き打ち検査を行なうような大人げない業者は避けるのがよいでしょう)
数回の検査でも同じような高い数値が検出されるようなら、岩盤浴室の構造上の問題や換気の問題、さらに、その施設の「湿度設定」が高すぎたり、「玉石タイプ」(鉱石をフラットに加工せず、そのまま使用するタイプ)の衛生上の限界も疑わなければならないでしょう。(上記のような衛生管理をキチンとするならまずそのようなことはありません)

さて、ここであなたの質問に戻りますが、一般利用者がこのような清掃や消毒をキチンと行っている施設かそれとも怠慢な施設かをどう見分けたらよいでしょうか?

一番よい方法は、利用者自身が上記の消毒の知識を予め勉強して、施設の受け付けで「どのような消毒をしていますか?」と質問することです。返答があいまいな施設は、キチンとした衛生管理やマニュアルができていない証拠です。

もうひとつ、あなたの「嗅覚」を利用することです。
自宅の浴室でもカビが繁殖すると臭くなりますね。
それと同じようなニオイがするような施設は真菌が繁殖している可能性もあります。敬遠した方が無難でしょう。

いずれは、施設の側も受付の壁に定期的な「検査結果」を自主的に掲示するようになる(なるべきです)でしょうが、それまでは以上の方法で自己防衛をしてください。

以上、今回は週刊誌の報道を機会に岩盤浴施設が見直すべき衛生管理の問題を説明しました。
いずれにせよ、感染事故は「予防可能」であることを忘れてはなりません。
その「可能」なことを手間隙と経費がかかってもをキチンとするか、それとも無視するかが、今後岩盤浴施設が選別される時代が来ると、生き残れるか消滅するかの分かれ道となるでしょう。

もうひとつ、岩盤浴の衛生管理の問題がクローズアップされればされるほど、私が主張している「第三者機関」の必要性が重要となってきます。
全国の岩盤浴の健全な発達を願う業者が集まり、第三者機関(協会)を設立して、そこが自主的な衛生管理の指導や衛生・消毒基準を設定するのです。

そのような機関が正常に機能するなら、岩盤浴は紆余曲折があっても一時のブームで終わることはないでしょう。
なぜなら、岩盤浴のすばらしさは、一度でも利用した人なら身体で実感して「とりこ」になるからです。

いいものはどのような試練も乗り越える力があるのです。

 

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