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 待合室の個室化をご検討ください

 

投稿者名:ケンタロー

タイトル:待合室の個室化をご検討ください


 

五味院長先生 様

先日、メールしました件のご回答ありがとうございました。

回答は掲示板でされるんですね。今日気が付きました。てっきり、メールで返事がくるものと思って
いたため、届いてないものかと思い2度も同じメールを送ってしまい、すみませんでした。

それにしても、あそこまで正直に書かれるとは予想していなかったため、恐れ入ったと言いますか、
他のクリニックの先生との人間的な器の大きさの違いを思い知らされました。

ブログに記載しても良いかという件につきましては、返事はメールでくると思い込んでいたために書いたものですので、掲示板という他の方も見られる環境でご返答頂ければその必要は全く無くなりました。

ブログには、掲示板に記載されましたとだけ書こうと思います。といっても、まだ開設して2ヶ月ほどのサイトですので、読まれる方は60人ほどですが。

最後に一つだけどうしても言いたかったのですが、今後五味クリニックの待合室の個室化の検討を是非お願い致します。
私が診察を受けたのは3年前ですので、もし現在は改善されていたら恐縮ですが、私が診察を受けた際には、待合室が個室化されておらず、しかも予約時間通り行っても、20分ほど他の診察待ちの方達と待たされたため、かなり嫌だった記憶があります。確かソファーが3つテーブルを囲むような形で置いてあったと思います。
もし、顔見知りの方に会ってしまったらという恐怖感もありました。
患者のプライバシー保護のためにも、個室化を検討して頂けると幸いです。


最後に、お忙しい中ご返答頂きましたことを、心からお礼申し上げます。

 

投稿者名:五味院長

タイトル:当院が待合室を個室化しない理由



ケンタローさん。
ご自分でブログを運営されているだけあって、あなたの前回の質問はかなり突っ込んだ内容でしたので、個人的には少し「むっと!」としたことは事実です。
しかし、一つの意地悪な質問にありのままにお答えすることも、多くの率直な質問を受ける立場にある者の義務と考えて、本当は言いたくないことも正直にお答えした次第です。
結果的には、あなたからお褒めの言葉をいただき光栄と思います。

ただ、ご要望の待合室の「個室化」の問題については、二つの理由から当院ではあり得ないことをお断りします。

ひとつは、物理的な理由です。
当院は小さな個人医院です。待合室を大々的な改装をする経済的ゆとりも、間切って個室化するスペース的ゆとりもありません。
しかし、20年以上も地道に病院を運営していれば、本当に個室化が必要ならば無理をしてでも実行できない相談ではありません。

私が個室化しない(むしろ、したくない)真の理由は、私の病院が「体臭や汗」の専門クリニックだからです。
過去ログでも何度となく触れていることですが、体臭や汗で悩む人には、ひとつの共通する特徴があります。

それは「自分だけがこれほど臭っている」「自分だけがこんなに汗かきだ」と自分自身を差別化することです。

通常、「差別」とは、他人に対してする行為です。ところが、体臭や多汗で悩む人は、「人」を差別するのでなく「自分」を差別して、一人で悩んでしまう傾向があるのです。

一人だけで悩むとどうなるか?
その悩みはどんどん膨らんで行き、妄想にまで発展する危険性があるのです。
だから、体臭多汗で悩む人は、一人になってはいけないのです。
自分の悩みをどんどん他人に打ち明けることが必要です。
例えば友達に「ねえねえ、私はニオイで悩んでいるけど、臭かったらごめんね」「汗かきではずかしいんだよね」等々自分から積極的に言い出すべきなのです。
そうすると、友達は「そうなんだ、全然気にならないよ」とか「実は自分も汗かきで悩んでいたんだ」などお互い様の人間関係が広がっていくのです。

私は常々こんなことを考えます。
仮に「100人の体臭多汗で悩む人だけの国があったらそれはどのような社会だろうか?」と。

きっと、その社会では、犯罪発生率は0%でしょう。
きっと、その社会では、他人の悪口を言う人も0%でしょう。
きっと、その社会では、いじめも0%でしょう。

以上の統計はあたりまえです。体臭や汗で悩む人は、自分の都合で悩んでいるのではありません。
自分のニオイで人に「迷惑をかける」、自分の汗が人を「不快」にすると悩んでいるのです。
つまり、体臭多汗の悩みは、自己的なものではなく人のための悩みなのです。

だから、体臭や汗で悩むのは、あなたが人を思いやる気持ちが強く、あなたの優しい性格ゆえなのです。

そのような人だけが構成員の国に、犯罪も悪口もイジメもあるわけがありません。
ですから、体臭や汗で悩む人は、自分が優しい心の持ち主であることを証明するためにも、堂々と自分の悩みを人に打ち明ければよいのです。

しかしです。実際には、あなたの人を思いやる性格は、人を煩わせることを心配するあまり、自分の個人的な悩みを他人に打ち明けること自体も、遠慮してしまうのです。
その結果です。
体臭多汗で悩む人はたいてい自分一人だけで、自分の「個室の中」で悩んでしまうのです。
その結果が、「自分だけが臭う」「自分だけが汗かき」だと自分の差別化につながっしまうのです。

だから、体臭多汗で悩む人が最も必要とするのは、体臭多汗で同じように悩んでいる「他人」なのです。

五味クリニックのHPには「読者の共有メール」があります。この共有メールには、私のコメントや回答はほとんどありません。ただ延々と個人的な悩みのメールが並んでいるだけです。
しかし、この「共有メール」を読んで日本中のどれだけの人が助けられたことでしょうか?
私は、実際に共有メールを読んで自殺を思いとどまった人は一桁の数ではないと想像します。

なぜ、共有メールで救われるのか?
それは、共有メールが、(体臭や多汗で悩んでいるのは)「自分一人ではない」ことを教えてくれるからです。
他人から「臭い」と言われて傷ついた人にこそ、その傷を癒しあうもう一人の他人の存在が必要なのです。
人は他人から傷つき、その他人から癒されるのです。
人は他人を必要としますが、その他人が自分を必要としてくれることでも癒されるのです。

これが「お互い様」の人間関係なのです。
だから、「自分の悩み」をただ述べているメールがもう一人の悩める他人を助けるのです。

だらか、あなたが、今体臭多汗で悩んでいるとしたら、それは日本のどこかで、密かに一人で悩んでいる誰かを助ける可能性があるのです。
つまり、あなたの悩みには「意味」があるのです。

共有メールの出発点は、18歳のある女の子の「一人じゃない」の言葉です。
体臭多汗で悩んでいるのはあなただけではないのです。

自分と同じ体臭や多汗で悩んでいる人に会いたかったから、私の病院の待合室に来てください。
私の病院には、風邪引きの人も糖尿病の人もリュウマチチの人もいません。美容外科のように、鼻を高くしたい人も目をパッチリしたい人も一切いません。
ただ、汗とニオイに悩む患者さんのみです。

みな悩みの「共有仲間」ではないですか?
「一人じゃない」ことを実感できる絶好の場をなぜ「個室化」する必要があるでしょうか?

私の病院の待合室では時々患者さん同士が会話を交わすこともあります。
手術前の人が、手術終わった人に「どうでしたか?痛くなかったですか?」
「麻酔は痛かったけど、看護師さんもすごく優しいですよ」と言った具合です(ついでに先生もハンサムで優しいですよと言ってほしいけど、私の病院では現場の主役はスタッフですので我慢しましょう)。
数ヶ月前に手術を終わって検診に来院された患者さんの明るくて自信に満ちた表情を見てください。
当院の待合室で、顔色を見ると、手術前の人か手術を終わった人か一目瞭然です。前の人は不安げで暗く、後の人はワキガの悩みが解消した喜びで自信に溢れているからです。

手術前に不安になるのは当りまえです。一生に一度の初めての経験だからです。
でも、手術の終わった患者さんの活き活きとした姿を見たら、不安もとれて勇気をもって手術を受けることができるでしょう。

だから、当院の待合室は、「みーんな一緒」がよいのです。個室化は「弧質化」につながります。
だから、当院では、たとえ経済的・物理的にゆとりができても、決して待合室を個室化することはないでしょう。

日本の社会が当院の待合室のように「みーんな一緒」の共有社会になることを願って、あなたの質問の返答としましょう。
また、辛らつな質問をお待ちしています。

 

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