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 ワキガ手術後の傷痕について

 

投稿者名:Dana

タイトル:手術後の傷痕について


 

初めまして。
突然ですが、メールをさせていただきました。術後のアフターケアは手術をした医院でしてもらうことは承知しています。しかしいくら不安を打ち明けても、医師、看護士ともに「大丈夫。大丈夫。」としか言われず、五味先生にすがる思いで術後の傷痕について教えていただきたく、ご連絡させていただきました。
私は先生のHPを拝見し、是非五味クリニックで手術していただきたいと思いましたが、医院が予想以上に予約でいっぱいだったため、休職期間では手術ができないことを知り、8月初旬に某美容外科で手術を行いました。
現在1ヶ月目ですが、傷痕が白くなり、開いてきています。右わきは人差し指の第一関節ほど開いています。一度看護士からは「皮膚が死んでいるからきちんと洗ってね。」と言われました。しかし先生のHPを拝見したところ、術後に急激な動きをした人になると知りました。でもなぜ休職中で常に身体を休めていたのに、このようになるかが理解できません。術後1週間目からわきの挙上は行っていました。暇な時は必ずするようにと医院から指示が出ていたからです。それにも関わらず、開口部は白くなり、その部分が取れてくると、ぼっこり穴があいています。周りの皮膚の一部でもケロイドではなく、ミミズが這っているようになり始めました。
先生のHPからも傷が残ることは覚悟していました。しかし目立つことが怖いのです。昔からわき毛が濃いためにノースリーブも着ることができず、やっと来年着れることを楽しみに手術を受けたのです。ですが、傷口の開きは治りが遅くなること、目立ちやすくなることを知り、不安でたまりません。
母親は手術に問題があるのでは?と言うのですが、あり得ることでしょうか。腕の挙上も決して無理には行っていません。

 

投稿者名:五味院長

タイトル:腋臭手術後の傷について



Danaさん。
手術後の傷や患者さんの心構え等については既に何度も説明していますので、このHPの読者は十分に理解されていることでしょう。

当院の場合には、傷に関しては、「これでもかこれでもか」というくらい必要以上に説明してから手術を受けていただきますので、患者さんも「覚悟の上」なのです。
ですから当院では術後「傷が気になる」と苦情を言われることはほとんどありません。
実は、私は傷の説明には写真より実物の方が説得力があると考えて、意図的に自分の腕を火傷させてつくった傷があります。私がそこまでするのは、傷については納得の上で手術を受けてほしいからなのです。

しかし、美容外科等の病院では、このような説明をするところは少数派でしょう。むしろ「傷は目立ちませんよ」くらいに安心させて手術するところがほとんどと思います。

そこに、あなたのような悲劇が生まれる可能性があるのです。
最近、美容外科で手術受けた後「説明と違って傷が気になる」という質問があまりのも多いので、今回は、再度「一般的で客観的な説明」をしておきましょう(しかし、残念ですが、あなたのケースについての説明は、他院の手術内容に関するコメントになりますので、お答えは控えさせていただきます)。

傷に関しては、まず腋臭(ワキガ)手術の特殊性を理解しなければなりません。

腋臭手術は、再発のないように100%完治させようとするなら、患部が「植皮」の状態になります。
植皮とは、火傷の時に、他の場所から皮膚を移植することです。当然、その皮膚には血管がありません。
ここが、他の縫合手術との根本的な違いです。皮膚の縫合手術は、血管のある皮膚同士を合わせて縫合するのに対し、植皮は、血管のない皮膚を植えつけて、血管が再生するまで、タイオーバーという方法で固定します。
血管があるかないかの違いは、当然傷ができやすいかできにくいかの違いとして現れます。

ただ、火傷の時の植皮術と腋臭の手術の植皮術との違いは、前者が他の場所から皮膚を移植するのに対し、後者は腋の皮膚をそのままの場所で固定することです。
しかし原理は同じです。

ワキガ手術が植皮の状態にならなければならないのは、ワキガの原因となるアポクリン腺の根っこ(導管部)が皮膚に入り込んでいるからです。ちょうど植林の時、周りの土と一緒に根こそぎ移植するように、ワキガ手術も導管部を周囲の皮膚の一部とともに「根こそぎ」剥離しなければ、再発してしまうからです。
その時、皮膚下にある血管は必然的に一緒に摘出されてしまいます。

ですから、腋臭手術は、患部が「植皮」の状態にならない手術法では、将来必ず再発することを意味します。
ですから、超音波(吸引法)等で、「術後の傷が目立たない」と喜んでいる人は将来再発の憂き目をみるのです。

以上が、まず100%完治させるために腋臭手術で避けて通れない、傷に関する基本的前提です。


その上に、次の3つの個別的要因が加味されます。


(1)出血

さきほど説明した通り、腋臭手術は植皮術です。そのために術後は、血管が再生するためのタイオーバーという「固定」が必要となります。
固定の目的は、血管が再生しやすいように皮膚と皮下組織を隙間のないように密着させることです。
この皮膚と皮下組織の間に、出血をして「血腫」がたまると、血管が再生しにくくなり、「瘢痕」という形で治癒することになります。
瘢痕は通常の皮膚に比べて、傷は目立ちます。
このような術後の出血の最も大きな原因は、術後に激しく動くことです。これは、患者さん側の要因です。
治療者側の要因としては、タイオーバーの固定が不十分な場合です。いくら固定をしても、タイオーバーと皮膚の間に隙間があれば、圧迫となりませんので、皮下に血腫がたまりやすくなり、その部分が瘢痕を形成しやすくなるのです。


(2)感染 

非常に稀ですが、術後に感染を起こすと、当然傷が残りやすくなります。特に、植皮部の皮膚は血管がないのですから、感染を予防する白血球などの防衛体制が弱くなります。
一度、感染を起こすと、その部分の皮膚が壊死して、皮膚そのものが脱落してしまいます。
脱落した皮膚が自然の再生力で閉鎖して治癒した後も、前述の瘢痕治癒となり、傷が残りやすくなります。
通常、普通の外科病院で術中に感染事故が起きることはまずあり得ないことです。
また、患者さんが毎日の消毒に通院できるようなら感染を起こすことはまずありません。
ただ、遠方の人で、自己消毒をする場合には、消毒不十分で感染を生ずることもありますので、注意が必要でしょう。


(3)ケロイド体質と色素沈着

前述の出血や感染が起きなくても、体質的にケロイドの人は、切開部や縫合部が数ヶ月後ケロイド状に盛り上がり、傷として残ることもあります。
さらに、元々皮膚にメラニン色素の多い人は、瘢痕部に茶色の色素が残ることもあります。
これは、患者さん側の要因です。ケロイド体質の人の対策については、また別な機会に説明しましょう。


腋臭手術の、傷が残りやすいという特性の上に、以上の3つのうちどれかが加味された場合には、「目立つ傷」が残ることになります。
一般的に言えば、1年〜2年経過した時点で、写真にとってもほとんど写らない程度になる人が70%〜80%くらいでしょう。
あとの20%〜30%の人に「なんらかの傷」が残ると考えてよいでしょう。
さらにその中で、以上の(1)〜(3)の要件が加味されて「目立つ傷」となるのは、確率的には多分数%以内でしょう。
しかし、たとえ数%でも、傷の残る可能性があることは事実です。

ですから私の病院では、
「手術は傷が残る約3割の側に入る覚悟で受けてください」「キレイなことを期待して傷が残ればがっかりします。しかし、残ってもよいと覚悟した上でキレイになったら嬉しいでしょう」と説明します。
また、「かなり目立つ数%に入ったら事故にあったものと諦めてください。ワキガ臭は黙っていても人に伝わりますが、腋の傷は見せないかぎり人は分からないでしょう」と念を押しています。

これらは「踏み絵」のようなものです。その段階で少しの傷でも気になりそうだと感じたら、私は絶対に手術を引き受けません。
私が過去ログ(当院で保険を扱わない理由について)の中で触れた「患者さんを選ばせていただく」という要件のひとつが「体臭の悩みが傷の悩みよりはるかに大きい」ということがあります。
100%完治させる思いで真剣な手術をする私にとって、その上に傷を気にする患者を引き受けることは荷が重過ぎるからです。

ここであなたの質問にもどります。実際に診察をしているわけではありませんので正確な判定はできませんが、メールの内容から推察すると、「何らかの傷」が残る3割に入る可能性はあります。しかし、「かなり目立つ傷」になる可能性は低いでしょう。

あなたは時間的な理由から私の病院ではなく、別の病院を選択しました。
仮にあなたがもう数ヶ月待って私の病院を選択したとしても傷の残る確率は同じだったかもしれません。
しかし、問題は、今からさらに数ヶ月後に、あなたの腋からあの「ワキガ臭」が再びしてくる確率です。
傷については「見せるところでない」と考えるならいずれ許せる時が来るでしょう。

私が最も心配する最悪の事態は、「傷が残った上にワキガが治っていない」ことなのです。

腋臭手術の目的についてはさまざま考え方があります。
中には、「ニオイが70%くらい減ればよいだろう」と考える医師もいます。
しかし、私は「手術療法」の目的は、ワキガ臭の「軽減」ではなく「完治」であると考えています。
「軽減」でよいなら、他にも電気凝固法等の傷の残りにくい方法もあるのです。

手術療法を選ぶ患者さんの本心は「自分の体から1%のワキガ臭もしなくなる」ことなのです。
ワキガ臭のしない体になって今までの自分から新しい自分に生まれ変わりたいのです。

だから、腋臭手術は、100%でなければ意味がないのです。

あなたが仮にワキガ臭の軽減でなく100%の治癒を求めていたとしたら、もう少し待てるだけの忍耐力がほしかったと思います。そこが残念でなりません。
少なくとも、あなたが私の患者になっていたら、傷は同じように残ったかもしれないけれど、ワキガ臭を0%の確率にするつもりで真剣に手術をさせていただいたからです。

 

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