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             投稿者名:五味院長 
            タイトル:電気治療の効果と限界について 
               
             
              
             
              Mさん。 
              
            まず電気凝固法と電気脱毛とは同じものではないということです。 
              
            電気脱毛は、ごく小さい電流を通して電気分解(理論はいくつかありますが)などの作用で毛根と皮膚の毛穴との結合を緩めることによって脱毛を容易にしたものです。 
              電気脱毛は何回もする必要があるのは、ヘアサイクルで新たな毛根ができるからだと言われています。(毛の再生理論はあまりよくわかっていないのです) 
              電気脱毛を使わなくても、何回も脱毛をしていると次第に毛が少なくなるのは、ヘアサイクルの休止期にあたる部分が次第に少なくなるからではないかとも言われています。 
              エステなどで電気脱毛をしても匂いは全く変化しないのは、アポクリン腺を破壊するほどの通電量がないからです。 
              
            ですから脱毛だけでなく、臭いも同時に減らすためにはアポクリン腺が凝固するくらいの強い電圧の通電が必要となります。 
              しかし、皮下ではいくら大きい熱が発生しても火傷はしませんが、脱毛針に高圧の電流を流すと皮膚に熱傷が生じてしまいます。 
              
            この欠点を解消したのが、浜松形成外科の小林先生が考案した「絶縁針」です。 
              皮膚に火傷ができないように針を絶縁体でコーティングすると高圧の電流を流してアポクリン腺を凝固することができるのです。 
              
            この針を使用した「電気凝固法」の効果は、さまざまです。 
              効果の判定は、実際に治療を何回か受けた後で患者さんにアンケート調査をするしかありませんが、わたしのクリニックでの結果は、「ワキガ体質の程度」と「悩みの程度」と「要求水準の高さ」によって異なります。 
              
            悩みがさほどでなく、軽度のワキガ体質で、臭いの減少を「ある程度でもよい」と比較的低めに設定している人は、かなりの満足感を得ています。 
              
            しかし、逆に重度のワキガ体質の方や悩みの程度が強い方や臭いを完全に取り除きたいという方は、残念ながら十分な満足を得ることはできません。 
              また汗も同時に悩まれている人も汗は全く減りませんので対象外です。 
              
            問題はそれらの中間程度の人ですが、この場合はもう個人の考え方です。 
              例えば、自分は手術そのものが怖いからという人、傷が少しでも残ると困る人、完全にワキガ臭が無くならなくても、人に強く迷惑をかけないようなら満足する人などは、 
              治療の「ファーストチョイス」として考えてもよいでしょう。 
            ファーストチョイスとは、とりあえず電気凝固法で治療をしてみて、満足いけばよいし、満足いかないなら将来手術療法を考慮するという二段構えに治療法です。 
            体臭の治療は、治療をなにもしないことや、デオドラント剤のみで対応する、といった選択を含めて最終的には本人の意思が尊重されるべきものです。 
              われわれは、治療の長所と欠点を含めてあらるる可能性を提示することが役目です。 
              
            逆に言えば、患者さんは出来るだけ医師から正しい情報(マイナスの情報も含め)を引き出す努力が必要です。 
              そのような意味で、この掲示板を上手に利用することは「賢い患者学」ということができるでしょう。 
             
            
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