わきが・体臭・多汗に悩む方の心と体の心療室

 

わきが・体臭・多汗 ミニコラム わきが・体臭・多汗 ミニコラム


高齢者のための口臭対策


 

わきが・体臭・多汗治療の権威 五味常明。これまでわきが等体臭の悩みを持つ方数万人に対し、カウンセリングや手術をおこなっている

五味クリニック院長

五味常明

 

 では次に、高齢者の口からのニオイの対処法について少々詳しくご説明しましょう。

 

 お年寄りの口臭が強いときはまず義歯が要チェックです。とくに義歯を支えているアクリル樹脂の部分にはプラークが付着しやすく、義歯を清潔にしていないと臭ってきます。大変ですがお年寄りは、自分の歯と義歯の二つの歯の手入れが必要なのです。

 とくに寝たきりで義歯をしている方は、食事がすんだら毎回義歯を外して口腔ケアをしないとすぐに口臭か強くなります。義歯を洗うのは市販の洗浄剤だけでなく一般家庭用の中性洗剤も効果的です。ニオイがなかなか取れない場合には除菌用の漂白剤に浸けておくのもよいでしょう。

 いずれも水でよく洗ってから装着してください。

 

 脳梗塞の後遺症で麻痺がある高齢者の場合、食後の口腔ケアは特に大切です。こうした高齢者は、食べ物を噛み、それを舌で送り込み、さらに呑みくだすという一連の動作に障害があるため、食後の口の中に食べカスが滞り、それが一時間かそこらで腐敗して臭ってきます。ですから食事を終えたら毎回速やかに口の中の食べカスを取り除いて下さい。

 しかしこれを高齢者が自力でするのは、ままならぬことです。そこでたいていは介護者が代わりに行うことになるのですが、これがなかなか難しいのです。やってみるとわかるのですが、介護者が口の中を覗くだけでも大変です。覗き込む角度をうまくしないと観察できません。

 またよくあるのですが、車椅子に乗った高齢者の正面から「はい、口を大きく開けてくださーい」と大口を開けさせるパターンです。確かに口は大きく開きますが、肝心の歯は唇に隠れてしまって、舌やのどちんこぐらいしか見えません。しかもこの状態では力が入りすぎてしまい唇が横に広がらず、手を入れにくいありさまです。  

 

 そこでポイント。口の中を観察するときは、五割ほどの力で口を開けてもらいましょう。介護者は片方または両方の人差し指を口に入れて、唇を軽く広げます。飢えの歯を見たいときは人差し指を上に持ち上げるように、下の歯を見たいときには逆に軽く引く。これでよく見えます。奥の歯を見るなら、もっと力を抜いて三割ほどの大きさで口を開けてもらいます。そして見たいほうの唇だけに人差し指を入れて後ろに引くようにします。ちなみに食べカスは麻痺のある側に残りやすいことを頭に入れておいて下さい。食べカスを素手で取り出すのに抵抗がある人は医療用の薄手の使い捨てのゴム手袋も市販されています。ただし手袋をすると小さな食べカスは掴みにくくなりますが、そのぶんガーゼで拭くなどして取り出せばきれいに掃除できます。小さなペンライトもあれば便利です。近頃は、歯医者さんが使うような鏡(デンタルミラー)も売っているので、歯の裏側や奥のほうを見ることもできます。ライト付きで歯の奥までチェックできる歯磨き用のデンタルミラーを使えば一石二鳥です。口臭を防ぐ効果もある歯磨き粉(ノンハームなど)の併用もよいでしょう。

 

 それからお年寄りの舌もよく注意して下さい。苔のような白いものがありませんか?

 これは舌苔といって胃腸の弱ったときや熱のあるときに増えてきます。舌苔に含まれるのは、口の中ではがれた上皮細胞や血液から遊離した白血球、組織の破片などです。舌苔には雑菌も繁殖しやすく、それ自体も臭います。また舌苔は唾液が少ないほどたまりやすいのですが、高齢者はただでさえ老化によって唾液の分泌が減少している上に、唾液の分泌を抑制する抗コリン作用のある様々な薬剤を服用していることが多く、さらに唾液が少なくなります。そのため舌苔が多くなりがちです。

 舌苔は寝起きのときに多くなりますから、朝食後の口腔ケアのときに食べカスと一緒にとってあげてください。舌苔はガーゼでも拭き取れますが、多い場合にはスプーンで軽くすくいとるとよいでしょう。

 

 ここまでは誰にでも起こりうる口臭でしたが、それ以外にもいろいろな病気が口臭の原因になります。たとえば鼻や胃腸、肺などは口とつながっているわけですから、そこが病気になれば口臭につながります。また糖尿病は甘酸っぱいアセトン臭がしますし、尿毒症が進行するとアンモニア臭がします。こうした病気を自覚しなかった人が、逆に口臭から病気を発見することもあります。たかが口臭と思わず注意してください。  

 

 では最後のポイント。一番簡単な口臭予防の方法を教えましょう。それは、食後に出涸らしのお茶の葉をガムのように噛むことです。噛むことによって唾液が出てきますし、そこにお茶のタンニンが加わって口の中の嫌気性細菌を殺菌してくれます。細菌としては「お、食べカスだ。いただきまーす」とはしゃいだ瞬間に出鼻をくじかれてしまうのです。あるいは柿の葉からとった柿シブにもお茶と同じ効果があるようです。しかも柿シブのタンニンは血圧を下げる効果もあるので脳梗塞の予防にもなります。

 高齢者のお茶代わりにおすすめです。

 


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