ワキガ・体臭・多汗 書籍紹介
デオドラントシリーズ1
体臭・多汗の正しい治し方
五味常明著 ハート出版 税込1030円 ISBN
4-938564-06-8 四六上製・198頁
人は誰しも多かれ少なかれ悩みをもって生きています。それは仕事上のことであったり、家族のことであったり、健康のことであったり、人それぞれに異なりますが、悩みから解放されて生きている人はまずいません。「生きている」ということは、悩みをかかえ込むということであり、「生きていく」ということは、その悩みを解決していくことです。
しかし、人は、自らそれらの悩みを乗り越え、克服していく力や強さをもっているものです。そうでなければ、今日までの営々とした歴史は築いてこれなかったはずです。
悩みを乗り越えるには、本人の努力や工夫する知恵が必要なことはいうまでもありませんが、相談相手となってくれる家族や仲間も必要です。
しかし、悩みのなかには、人にもいえず、解決法もわからず、ただ一人悶々と苦しんでしまうような性質のものもあります。とくに、自分の身体に関係する悩みには、その傾向があります。
ある青春の一時期に、自分の要望に劣等感情を抱いた人は多いことでしょう。でも、そのような悩みの大部分は、成長するにつれて自然と消えてしまうものです。なぜなら、人生の価値や存在意義は、もっと他にもあることを知るからです。
ところが、同じ身体に関する悩みでも、年月がたち、社会生活の範囲が広がっていくにつれて、それだけ増大するようなものもあります。その代表的なものが「体臭」に関する悩みです。
いわゆる「ワキガ」で悩む人の多くは、自分で自分のにおいがイヤだと悩むのではなく、「自分のにおいで他人に迷惑をかけている」と、責任を感じて悩んでいるのです。いくら鼻が低かろうが、いくら目が小さかろうが、そのことが他人に迷惑がかかるといって悩む人はいないでしょう。そこがワキガの悩みの特異なところなのです。
ワキガは、人間が進化する以前は、異性を魅きつける魅力的なにおいでした。だが、今日では、誰にも嫌われ、本人にとっては死ぬほどつらい精神的圧迫を与える“悪魔”にも等しいにおいになっています。
他人に害を与えていると感じることほどつらいことはありません。まして、真面目で、誠実で、責任感の強い人なら、なおさら生きていること自体が苦痛に思えてくるものです。
たしかに、医学上は、ワキガは病気ではありません。ワキガだからといって、どこも痛いわけではない、かぜをひきやすいわけでも、長生きできないわけでもありません。しかし、一度「自分はにおう」「自分は他人に迷惑をかけている」「自分のにおいは他人に嫌われている」と悩み始めると、その時点で、それは立派な「病気」になってしまいます。
いってみれば、ワキガというのは「体の病気」ではなく「心の病気」なのです。
私は、長年ワキガの診療をしていて、今さらながら痛感することは、体臭の悩みの奥の深さと、その悩みの多様性についてです。100人の人の体臭の悩みは、みなそれぞれに、原因も内容も異なっています。それは「におい」というものが、嗅覚という個人の主観に依存する感覚によって左右されることや、ワキガというものが、最終的には「心の病気」であることによります。
ひと口にワキガといっても、ほんのちょっと汗くささが気にあるといったものから、部屋に入ったとたんに強烈なにおいを発するものまで、じつに幅広いのです。
今まで、多くのワキガに関する本が出版されました。それらのほとんどは、手術療法を中心に書かれています。いや、強引に手術療法に結びつけている、といってよいほどです。しかし、ワキガの特異性や、その悩みの多様性を考えれば、当然のことながら、治療法も多様にならざるを得ないのではないでしょうか。
私が、この本を書こうと思ったのは、体臭や多汗で悩んでいる人が、自分に合った正しい治療法を選択してほしいからです。その意味で、この本は、治療法についても、薬物療法から食事療法、精神療法、そして手術法に至るまで、ひとつの方法に片寄ることなく説明しました。
読者の方々には、多の著作物などとも比較して、自分の悩みの正しい解決方法を、客観的に読み取っていただければ幸いです。
…まえがきより…
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