五味クリニック 新聞・雑誌掲載情報

 

健康教室 2004年7月増刊号


ワキガの治療は?
 より抜粋

Q.毎学期始めに身長、体重の測定をしています。6年女子で、友だちから、「くさい、きたない」と言われている子がいます。以前は、よくお風呂に入って洗う、頭が洗えないときは濡れタオルでふく等と指導してきました。ところが今回、「ワキガ」のようなにおいがしたのです(今まで測定していたときには感じませんでした)。本人はまったく気にしていない様子ですが、仲間はずれになりやすい子なので、どう指導したらよいか迷っています。はっきりと言って治療させたほうがいいでしようか?(養護教諭)

A.ワキガ臭などの体臭の治療は、「悩みの治療」と同じです。ワキガ臭が消えることで悩みが解消され、その人が将来、積極的で前向きな生き方ができることが治療の目的です。ですから、ワキガの治療は本人が悩んでいることが前提になります。
この児童の場合には「本人が全く気にしていない様子」ということですので、今はそっと見守ってあげるのがよいでしょう。しかしこれは、「いじめ」の対称になる可能性がないという条件付きです。ご質問のケースでは、友だちから「くさい、きたない」と言われているようですので、それが単なる冗談やちょっとしたからかいに終わるのか、それとも言葉の暴力となり、将来深刻なトラウマを残す可能性があるのかを見極める必要があるでしょう。
私のクリニックのホームページには、においで悩む小中学生の声が毎日何通も送られてきますが、以下はその一例です。


「私は中学3年生ですが、1年以上も引きこもり生活をしています。これからもずっと続くのではないかと苦悩の毎日なのです。夜、布団に入って寝ようかと思うと大粒の涙がポロポロと流れ出て止まらないのです。
小学生の頃から「○○ちゃんってなんか、汗くさいよね」と、友だちから何度も言われていたんです。そして中学校に入って何ヶ月かたったある日、クラスの中心的グループで「ワキガ」について話題になっていました。私のいるほうに向かって「ワキガ反対!ワキガ反対!」と何度も叫ぶのです。その時、私は正直ギクッとしました。それ以降、何かつけて、ワキガが話題に上るようになりました。はじめは二、三人で話してたはずが、いつしか大勢の人に伝わっていったのです。「お風呂で洗っていないんじゃない?きたなーい」とか、近くにすわったら「おえー!最悪!吐きそう!気持ち悪い!」などと笑いごとのように言うのです。わざわざ国語辞典で「腋臭」の意味を調べて教室で大声で発表されたりもしました。私はにおいがしないようにちぢこまっていました。
朝、学校に行く前には必ずシャワーを浴びて、脇を何十回も洗い、少しでも多くの風を当てて、ワキガ用のクリームをぬって登校していました。それでも、上級生までも「来るよ・・・」とひそひそ話し、私とすれ違うと鼻を押さえ、顔をしかめるようになりました。それ以来、私は学校に行けなくなりました。
なりたくてワキガになったわけではないのに、どうして私だけが苦しむのか、もう精神的にヤバイです。正直、疲れました。生きていて何の意味があるんだろうと思います。こんなに傷つけられて、もろくなって、もう死にたくなってきます・・・。」


今はデオドラントの時代です。社会の清潔志向から「におい=不潔」のイメージが定着して、子どもたちの間でも「無臭志向」が広がっています。そのため、子どもたち同士のケンカやいじめの場面で、以前は容姿や性格をあげつらう言葉が使われていましたが、今は「クサイ、キタナイ、ワキガ」等のにおいや不潔さを表す言葉が使われるケースが増えています。 この児童の場合「仲間はずれになりやすい」ということですので、まず体臭の問題がいじめや引きこもりにつながりやすい現状を保護者に説明した上で、次のような対応をするのがよいでしょう。
まず、本当にワキガ臭があるかどうかの判定です。これには、耳垢の状態を見ます。綿棒で外耳道を軽く擦り、溶けたキャラメルのような「湿性」の耳垢がみられる場合は、ワキガ体質の可能性が高くなります。耳垢が湿っていない場合は、まずワキガ体質ではありませんので、本人に、「心配しなくていいよ」とハッキリ教えてあげるのがよいでしょう。それだけで言葉の暴力を受け流せる自信になります。
しかし、仮に耳垢が湿っていた場合は、具体的な対応が必要になります。もっとも効果的な治療は手術ですが、この児童の年齢ではまだワキガの原因となるアポクリン腺が十分成長しきっていないため、手術をしても取り残してしまい、将来再手術が必要となる可能性があります。手術療法を選択するのは、体がもっと成長する高校生くらいまで待ったほうがよいでしょう。しかし、その場合でも「手術すれば100%完治する」という事実を教えてあげるのも、自信を持って生きるための希望となります。
この時期の児童に対する最も適切で具体的な対応は、やはり市販のデオドラント剤を上手に使うことです。現在、各化粧品メーカーから効果的な制汗剤が商品化されています。特に銀が配合されたものは効果の持続時間が長いため、朝登校する前にスプレーするだけで十分です。市販の製品でなくとも、漬け物などに使う「ミョウバン」(薬局で購入できます)を粉末にして腋に塗布するだけでもよいでしょう。



 


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